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映画の話などを。

学生の頃から映画が好きで、高校生の頃は月に1〜2本、大学生のときは土日になるとどこかの映画館に足を運んでいました。当時は個性豊かな映画館が数多くあり、その日の気分でどの映画館に行くかを決めるといった感じでした。

初めて見た映画は、小学4年生のときに父親に連れて行かれた『遥かなる山の呼び声』(山田洋次監督)でした。

しかしまあ、時代を感じるポスターですね(笑)。

これはあの名作『シェーン』の日本版で、小学生が見るにはかなり渋めの作品です。恐らく、父親が見たくて、僕を免罪符として連れて行ったのだと思います。

しかしながら、これがとても面白い。もちろん子供なので作者の意図をちゃんと捉えているかは疑問ですが、それでも高倉健はかっこよかったし、倍賞千恵子も子役の吉岡秀隆も素敵だったし、とにかくスクリーンに映し出される世界に釘付けになったのです。初めて物語に感動したと言える体験でした。

実はその日、僕はもう一つ初めての体験をするのです。

映画のクライマックス。感動で鼻の奥がツンとなった僕は、涙をこらえながら、そっと横にいる父親に視線を移しました。

父親は泣いていました。

初めて見る父親のその姿に目に、僕は内心、心臓がキュッとなるくらい驚きました。自分の親が泣くなんて、子供の僕には想像もつかないことでした。いっぱい涙を浮かべてスクリーンに見入っている父親の姿に、僕は見てはいけないものを見ているような気持ちになり、それからは視線を横に向けることができなかったのです。

映画が終わっても、まだ僕の心臓は落ち着きません。このあと、父親と何を話せばいいのだろう。困惑している僕に、父親は「いい映画だったな」と言いました。僕は小さく頷くだけでした。帰りの道中もずっと映画のシーンと父親の涙が頭の中で繰り返されました。

40年近く前の出来事ですが、鮮明に記憶に残っています。結局、その話をちゃんとすることなく父親は亡くなったのですが、今思えば、語らずとも何か大切なことを伝えようとしたのかもしれません。

とまあ今週はこんな感じで。次回辺りでは僕が独断と偏見で選ぶ好きな映画の紹介をしましょうか。

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