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きんようびの町田です。

今日から新年度。

進学、就職、あるいは異動などで新しい環境に身を置く人も多いと思う。

僕は予備校や高校、専門学校で講師をしている。

やはりこの時期は新たな出会いも多い。

期待に胸膨らませている人、不安そうな人、色んな感情が同じ場所に集まる雰囲気は独特だ。

僕もちょっとそわそわしている。

半分は楽しみだけれど、「生徒さんに嫌われたらどうしよう」といった不安が半分を占める。

新年度一発目の授業で教室に向かうときなどとても緊張する。

「このまま帰りたい」という思いが一瞬よぎる。

それは舞台の初日が開演する直前の心境に似ているかもしれない。



さて、ちょっと気になると言うか、気が付いたことがある。

予備校の講師をしていると、よく授業以外で受験生から質問を受ける。

スタートしたばかりの頃は基本的なことやこれからの勉強の仕方がメインだ。

最近の受験生は真面目と言うか、とても大人しい。

説明しても返事は「はい」というだけで、理解したとしても「ああ」というぐらいでリアクションが薄い人が多い。

こちらとしては理解してくれればいいので、別に問題はないのだけれど。



ただ、数年前は講師の僕にわざと難問を持ってくる尖った受験生が毎年何人かはいた。

実際に受験する気のない難関大学の過去問とか持ってくる。

要は「お前の実力はどれほどのもんだ?」と僕を測りに来ているのだ。

下手したら、僕が困る姿を期待してニヤついている奴もいる。

ほぼ道場破りの類と変わらない。

僕はそういった挑戦は嫌いではないので、一気に脳内でスイッチが入る。

こういうのは断然スピードが勝負だ。

問題を読んだとたんに要点を把握し、必要な理論を見つけ、解法の道筋をつける。

そして「あとは計算だけだからやっといて」で一丁上がり。

その際に気を付けるのは、決して表情を歪めないこと。

どんなに内心ヤバいと思っても、そこは優雅に湖を漂う白鳥が如く「こんなの楽勝っしょ」的な涼しい顔をしていなければならない。

こうして返り討ちにすることで、尖った受験生は「こいつ出来る!」と僕を信用してくれるようになるのだ。

ある意味、ゲーム感覚で受験生との距離を縮めていたのだが、ここ数年はそんな道場破りが現れないので少し寂しい気持ちである。



時代が変わったというのも要因だろう。

SNS等で気軽に連絡が取れるようになった昨今、世の中はより年齢が近い者同士で集まったり、希薄な人間関係を楽しんでいる。

しかしせっかくの出会い、もう少し熱量のある関りをしたいと思うのは、きっと僕がおっさんだからだ。

先日、知人とそんな話をしたときも、「それは受験生とあんたの年齢差がどんどん広がってるからだよ」と言われた。

確かに言われてみたらそうだよな。

僕が30代の頃なら、まだ近所のお兄さん的なポジションも可能だっただろうが、50を過ぎた今は下手したら親よりも年上だ。

相手からすれば年齢差だけで怖い印象を持つかもしれない。

嗚呼、時の流れは無常だ。

こちらの都合とは無関係に流れ続ける。

でもこの時期になると、新たな道場破りの出現を心待ちにしてしまう。

僕にとって、とても楽しみな時間でもある。

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