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コロナ禍のスポーツ観戦で得たもの。

(金曜日担当:まちだ)

GWも終盤。コロナ禍も3年目になり、過去2年に比べて活気が戻ってきているように感じる。

僕に関して言えば、仕事と稽古があるのは毎年のことだが、それでも合間を縫って出かけるようにしている。中でも5月1日に札幌ドームで行われた、大学ラグビーの早明戦は楽しかった。この日は「北海道ラグビーの日」だそうで、今回の一戦もそのプログラムの一つとして開催されたようだ。

地下鉄東豊線福住駅から札幌ドームまでの道のりを歩く。当日は風が強く寒かったが、同じ目的で多くの人が歩いている列に加わっていると、不思議とそんなものは気にならなくなってしまうものだ。

ドームに到着し、サブウェイのBLTサンドとウーロン茶、コロコロポテトを買い、席に着く。グラウンド上では既に両チームが試合に向けての準備をしていた。細かなパスを繰り返し、ラインアウトを確認するなど、緊張感あふれる様子に、こちらも思わず息をのむ。

そしてキックオフ。
緑の芝生の上を縦横無尽に駆ける選手たちを見ているうちに、ちょっとした違和感を覚えた。最初はそれが何か分からなかったのだが、徐々にその正体がはっきりしてきた。スタンドが静かなのだ。コロナ禍の影響でスタンド内では応援は基本的には拍手のみ。従って試合中の観客は試合の状況を息を潜めて観ている感じなのだ。

考えてみれば、コロナ禍になってからスポーツ観戦をするのは初めてだった。以前までは(阪神タイガースの試合に限るが)選手のプレーの一つひとつに声援(野次とも言う)を送ったり、応援歌(六甲おろし)を歌ったりとても賑やかな(時には殺伐とした)雰囲気の中で試合が行われていた。しかし今回はそれがない。するとグラウンド内で選手が掛け合う声や、ボールを蹴る音、ホイッスル、タックルなどで身体がぶつかり合う音がとても鮮明に聞こえるのだ。これは新鮮な驚きだった。静かだからと言って別に盛り上がっていないわけではなく、試合中にいいプレーが出たときは大きな拍手が鳴るし、トライ間近の戦況では会場全体が何度もうねっていた。観客も選手とボールの行方を必死に追いかけ、試合に参加していたように思えた。

僕はこの感覚がとても好ましかった。
ワイワイ応援するのも勿論楽しいのだが、それ以上に目の前で必死に戦っている選手たちに没頭できた。だからそこで起こっていることは一瞬たりとも見逃したくなかったし、チームの一員として参加したいとさえ思うようになっていた。これまでなかった感覚だ。純粋にスポーツ観戦を楽しんだような気がしている。これもコロナ禍が生んだ変化の一つだろう。

きっともう少しでコロナとの戦いはひと段落する。飲み薬が普及すると言うこともあるし、何よりコロナが未知のウィルスではなくなることで上手に付き合うようになる。この時期に得た変化で有益と思えるもの(例えばライブ配信など)は新しい技術として残っていくだろう。スポーツ観戦も従来とは違ったスタイルになるような気がする(声援はOKにするとしても)。特にプロ野球の鳴り物の応援は一回お休みしてみてはどうか。そして打球音や捕球音、選手がグラウンドを踏み締める音に耳を傾けるのだ。きっと今までとは違った気分になると思う。

さて早明戦に話を戻す。
両チームとも一進一退の攻防で、非常に見ごたえのある展開が続いた。
早稲田大学が先制すると、すかさず明治大学が逆転に成功し、更に追加点で突き放すが、後半に入って早稲田大学が怒涛の反撃が始まるという何ともしびれる展開となった。僕が座っているすぐ近くでトライが生まれる幸運も手伝って、後半ロスタイムの時点で19対19の同点。誰もが引き分けを予想し始めたそのとき、明治大学が執念の勝ち越しトライを決めた(その後のコンバージョンキックも成功)。結果、26対19で明治大学の勝利。試合終了のホイッスルを聞いた瞬間、勝ち負けを越えた充足感のようなものが会場全体を包んでいた。いいものを観た、素直にそう思える時間だった。

最後に。
ハーフタイムのときのこと。
静かに試合再開を待っている間、どこからともなく小さい男の子の声で「ガンバレガンバレ明治、ガンバレガンバレ明治」という声援がドーム内に響いた。恐らく父親がそそのかしてその子に言わせたのだろう。厳密にいえばルール違反なのだが、静寂の中で響くその男の子の声はとても可愛らしかった。会場もどこかほっこりした雰囲気になった。これもこの日の観戦スタイルであればこそ聞こえた声だろう。

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